2024年に施行された「フリーランス新法(特定受託事業者保護法)」によって、イラスト制作やデザイン依頼を行う際に“絶対に伝えないといけない項目”が法律で明確になりました。
「契約書なしで依頼しても大丈夫?」
「DMだけで進めていい?」
そんなやり取りが、これからは“違法”になる可能性があります。

本記事では、依頼者・クリエイター、それぞれが最低限確認すべきポイントをわかりやすくまとめました。
トラブル防止のためのチェックリストとしてご活用ください。


依頼時に 絶対伝えないといけない8つの項目

フリーランス新法で、依頼者が必ず事前に伝える必要があるのはこの8つ

  1. 業務委託事業者および特定受託事業者の名称
    依頼者とフリーランス、それぞれの名称が必要となります。
    本名でなくてもOK

  2. 依頼日
    依頼者とフリーランス、お互いが依頼内容に合意をした日のことです。

  3. 業務内容

    1. 成果物の内容

    2. 使用範囲(媒体/期間/地域)

    3. 修正対応の範囲

    4. 権利関係

    5. 中止・遅延が発生した場合の扱い

  4. 給付を受領または役務の提供を受ける期日
    いわゆる納期、成果物の納品日のことです

  5. 給付を受領または役務の提供を受ける場所
    いわゆる納品方法のことです。
    BOX、メール、Gドライブなどの取り決めをしておきます。
    セキュリティの観点からPWを付ける場合はこちらで決めておくと良いでしょう。

  6. 給付の内容について検査する場合は、検査を完了する期日
    これは、受け取った成果物について依頼者側がチェックする”検査”があるなら、いつまでに検査を終えるのか書きましょうという話です。イラスト制作業務に於いても、原則必須と考えたほうが良いです。
    イラスト制作の場合、ラフや彩色の工程ごとにチェックがあると思います。しかしこれらのチェック完了期日=納品日とならない場合も多いため、「検査は納品後〇営業日以内に行うものとし、検査の結果問題がなければ納品完了とする。」といった書き方をするとよいでしょう。ラフは2営業日以内、清書は3営業日以内など工程ごとに分けて記載してもOK。
    媒体審査等がある場合は、ガントチャートでスケジュールの見える化をしておくとスムーズに進行できます。

  7. 報酬の額および支払期日
    ●報酬の額について
    工数が依頼段階で不明な場合等、具体的な報酬額を記載することが難しい場合は算定方法を記載する形でもOKです。
    ※ちなみに、報酬の振込手数料は原則として発注事業者(親事業者)が負担となります。フリーランスの報酬から差し引くことは「フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに報酬を減額する行為」として禁止されているので注意が必要です。
    ●支払期日について
    支払期日は、具体的な支払日を特定する必要があります。
    日にちを特定する必要はなく例えば「翌月末払い」や「〇日払い」など、納品日から起算して60日以内で明確な期日設定をすることが義務付けられています。
    ※例外的に60日をオーバーしても可能な場合があります。
    「特別な事情」があり、「書面(電子契約)」で双方合意した場合に限定されます。

  8. 現金以外の方法で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること
    これは該当する場合のみでOK

ここが曖昧なまま進めると、依頼者側に「違法」のリスクが生まれます。


法律上の義務ということは
「説明を省略できない」ということ

依頼者は「確認した前提じゃなく、説明した事実」が必要となります。

つまり👇

  • DMに書き忘れた

  • 打ち合わせで話したつもり

  • いつもこうだから

  • とりあえずやってみて

↑これが全部アウトになる可能性があります。
口約束でもお互いの合意があれば契約は成立しますが、フリーランス新法では、取引の条件を書面または電磁的方法により明示することが義務化されています。


DMだけで進めるのはアリ?ナシ?

結論から言うと、電磁的方法にあたるため可能ではありますがメールの方が◎
ちなみに電磁的方法:電子メール、SNSのメッセージ、チャットツールなどです。

DMをおすすめしない理由としては、

  • 証拠が消えてしまう場合がある。
    チャットワークやSlackの無料プランを使用している場合ログが消える。

  • 依頼内容をあとから編集できる場合がある。
    上記ツールであれば後からテキストの編集ができます。

  • SNS等のサービスが終了した場合やアカウントを消した場合、明示の内容が確認できなくなる。
    →フリーランスが書面での交付請求をした場合には、依頼者は交付する必要があります。

メールかGoogleドキュメントなど編集履歴が残るツールを使用する方がトラブルを避けられます。
クリエイター側もDMで依頼が来た場合は依頼内容をメールで再送する習慣をつけると良いと思います。


イラストの領域で特に注意しておきたいこと

イラスト制作は特に👇

  • 著作権の扱い

    • 同一性保持(改変について)

  • 使用媒体の追加

  • AI利用の可否

    • 生成AIに学習させることは、現在の著作権法では原則として著作権者の許諾なく可能とされています。しかし、実際の制作現場では「自分の作品が学習データとして使われることに抵抗がある」「将来自分のスタイルが模倣されるのでは?」と不安に感じるクリエイターが少なくありません。

      法的には許諾不要であっても、信頼関係の構築という観点からは、事前に可否を確認しておいた方が安全です。依頼内容にAI学習やAI活用が含まれる場合は、契約書や依頼書の段階で具体的に明記しておくと、お互いに安心して進めることができます。

  • 商品化の範囲

このあたりのトラブルが多いので契約書に明記しておくのがおすすめです。


依頼前にこれを送っておけばひとまずOK

色々書きましたが、
業務内容/納品形式/使用範囲/報酬額/支払時期/納期について、確認させていただけますでしょうか?

短くてもこれだけ送っておけば最低ラインはクリアできます。
(コピペ可能な確認文テンプレとしてお使いください)


テンプレダウンロードはこちら

簡易版ですが上記のテキストの詳細版を、Googleドキュメント形式で配布しています。
ご自身のGoogleドライブにコピー&編集してご利用ください。

※フリーランス新法など最新の法令状況に合わせて随時更新します。
※必ずリンク先の最新版をご確認ください。

テンプレはこちら 〉


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December 8, 2025 • 7:49PM

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